
鏡を見るたびに気になる、前歯の差し歯の黄ばみ。
自分の歯と一緒に白くしたいと思っても、差し歯はホワイトニングできるか分からず悩んでいる方もいるかもしれません。
残念ながら、一般的なホワイトニングで差し歯を白くすることはできません。
しかし、白くするための適切な方法は存在します。
この記事では、差し歯がホワイトニングできない理由から、黄ばみを解消する具体的な治療法、変色の原因、そして白さを長持ちさせるための予防法までを解説します。
結論:差し歯はホワイトニングで白くできません
まず結論からお伝えすると、差し歯は、歯科医院で行うオフィスホワイトニングやご自宅で行うホームホワイトニングといった、薬剤を使用する方法では白くできません。
これらのホワイトニングは天然歯を白くすることを目的としており、差し歯の素材には作用しないため、黄ばんでしまった差し歯の色は白くならないのです。
もし差し歯がある状態でホワイトニングの施術を受けると、周囲の天然歯だけが白くなり、かえって差し歯の黄ばみが目立ってしまう可能性があるので注意が必要です。
差し歯にホワイトニング剤が効かない理由
ホワイトニングで使用される薬剤は、過酸化水素や過酸化尿素を主成分とし、歯の内部にある色素を分解することで歯を白くします。
この作用は、天然歯の表面にあるエナメル質に対して効果を発揮するように作られています。
一方、差し歯はレジン(プラスチック)やセラミックといった人工の材料でできているため、薬剤が浸透して内部の色素を分解する化学反応が起こりません。
そのため、ホワイトニング用の薬剤を塗布しても、差し歯自体の色を白くすることはできないのです。
これは、市販のホワイトニング効果を謳う歯磨き粉についても同様で、差し歯そのものを白く変える効果は期待できません。
周囲の天然歯だけが白くなり色がまだらになる可能性も
差し歯がある状態でホワイトニングを行うと、薬剤が作用する天然歯だけが白くなり、人工物である差し歯の色は変わりません。
その結果、白くなった天然歯と黄ばんだ差し歯の色との差が際立ってしまい、口元全体の色のバランスが崩れ、まだらな印象になってしまう恐れがあります。
もし天然歯のホワイトニングを希望する場合は、先に天然歯を目標の白さまでホワイトニングし、その白くなった歯の色に合わせて新しい差し歯を作り直すのが一般的な治療手順です。
これにより、全体の歯の色が均一に整い、自然で美しい口元を実現できます。

黄ばんだ差し歯を白くするための主な方法
差し歯はホワイトニング剤で白くすることはできませんが、黄ばみを解消する方法はあります。
どのような原因で黄ばんでいるかによって対処法が異なるため、まずはご自身の差し歯の状態を正確に把握することが重要です。
主な対処法としては、歯の表面の汚れを落とす「クリーニング」と、差し歯自体を作り替える「交換」の二つが挙げられます。
それぞれの方法で、黄ばんだ差し歯を再び白く見せることが可能です。
歯の表面に付着した着色汚れならクリーニングで除去可能
コーヒー、お茶、タバコのヤニといった外部からの着色物質が差し歯の表面に付着して黄ばんでいる場合、歯科医院での専門的なクリーニングによって除去できます。
PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)と呼ばれる処置では、専用の機器やペーストを使い、歯科医師や歯科衛生士が歯の表面を隅々まで磨き上げます。
これにより、差し歯の表面を傷つけることなく、日常の歯磨きでは落としきれない頑固な着色汚れを取り除き、差し歯が本来持っていた色や光沢を取り戻すことが可能です。
ただし、この方法は表面の汚れにのみ有効であり、差し歯の素材自体が経年劣化で変色している場合には効果がありません。
差し歯自体の変色は作り直し(交換)で白くする
差し歯の素材であるプラスチックなどが経年劣化によって内部から変色してしまった場合、クリーニングでは白くできません。
この場合の唯一の解決策は、古い差し歯を外して新しいものに作り直す(交換する)ことです。
差し歯を交換する際には、現在の周囲の歯の色調に合わせて新しい差し歯の色を細かく調整できるため、口元全体の色のバランスを整え、自然な見た目を手に入れることが可能です。
特に人目に付きやすい前歯が黄ばんでいる場合、作り直しによって口元の印象を大きく改善できます。
新しい差し歯も素材によっては将来的に変色する可能性があるため、歯科医師と相談の上で素材を選ぶことが重要です。
なぜ差し歯は黄ばんでしまうのか?考えられる4つの原因
新しく入れたはずの差し歯が、なぜ時間とともに黄ばんでしまうのでしょうか。
その原因は一つではなく、差し歯の材質や日々の生活習慣が大きく関わっています。
例えば20代や30代で入れた差し歯も、数年経つと周囲の歯との色の違いが気になり始めることがあります。
原因を知ることは、適切な対処法を見つけ、今後の黄ばみを予防するためにも非常に重要です。
ここでは、差し歯が黄ばんでしまう主な4つの原因について詳しく見ていきます。
原因1:プラスチック素材の経年劣化による変色
保険の差し歯に多く用いられるレジンは、経年劣化しやすい素材です。
レジンには吸水性という性質があり、毎日口の中にあることで唾液や飲食物に含まれる水分や色素を少しずつ吸収してしまいます。
その結果、時間とともに素材の内部から変色が起こり、全体的に黄ばんだ色合いに変化していくのです。
この内部からの変色は、歯の表面を磨くクリーニングや歯磨きでは落とすことができません。
また、プラスチックは表面に目に見えない微細な傷がつきやすく、その傷に汚れが入り込むことでも変色が助長されます。
原因2:コーヒーやカレーなど飲食物による着色汚れ
コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレー、醤油といった色の濃い飲食物に含まれる色素は、差し歯の表面に付着しやすく、着色汚れ(ステイン)の原因となります。
特に、保険適用で使われるプラスチック製の差し歯は表面が滑らかではないため、天然歯よりも着色しやすい傾向にあります。
飲食の後、これらの色素が口の中に長く留まるほど、差し歯の表面に沈着しやすくなります。
最初は歯磨きで落とせていた汚れも、時間とともに蓄積していくと簡単には取れなくなり、差し歯全体の黄ばみとして目立つようになります。
原因3:タバコのヤニの付着
タバコに含まれるタール、いわゆる「ヤニ」は、差し歯が黄ばむ大きな原因の一つです。
ヤニは粘着性が非常に高く、歯の表面に強力に付着する性質を持っています。
このヤニが差し歯の表面に付着すると、茶色や黒っぽい頑固な汚れとなり、通常の歯磨きで取り除くことは困難です。
喫煙の習慣があると、ヤニが徐々に蓄積し、差し歯全体の色を暗く、黄ばんだ印象に変えてしまいます。
特に表面に傷がつきやすいプラスチック製の差し歯は、タバコのヤニが付着しやすいため、より一層変色が目立ちやすくなります。
原因4:研磨剤の強い歯磨き粉による細かい傷
差し歯の黄ばみを気にしていると、つい研磨剤(清掃剤)が多く含まれた歯磨き粉でゴシゴシと強く磨いてしまいがちです。
しかし、この行為は逆効果になることがあります。
特にプラスチック製の差し歯は、天然歯に比べて表面が柔らかいため、研磨剤によって無数の細かい傷がついてしまいます。
一見きれいになったように感じても、傷ついた表面はさらに着色物質が付着しやすい状態になります。
その結果、コーヒーやタバコのヤニなどの汚れが傷の内部に入り込み、かえって黄ばみを悪化させてしまうのです。
差し歯には研磨剤の少ない歯磨き粉を使用し、優しく磨くことが大切です。

差し歯の白さを長持ちさせるための予防法
新しく作り直した差し歯や、クリーニングできれいにした差し歯の白さは、できるだけ長く維持したいものです。
そのためには、歯科医院での治療だけでなく、日々のセルフケアや生活習慣が非常に重要になります。
差し歯の素材選びから、自宅でのホームケア、そして定期的なプロフェッショナルケアまで、いくつかのポイントを意識することで、差し歯の黄ばみを効果的に予防することが可能です。
ここでは、差し歯の白さを長持ちさせるための具体的な方法を紹介します。
着色しにくいセラミック素材の差し歯を選ぶ
これから差し歯を交換する予定がある場合、素材選びが白さを長持ちさせる上で最も重要なポイントとなります。
保険適用のプラスチック(レジン)素材は変色しやすいのに対し、自費診療となるセラミックは着色や変色に非常に強いという特徴があり、長期的に美しい白さを保てます。
セラミックは陶材の一種で、表面が非常に滑らかで硬いため、傷がつきにくく、飲食物の色素が付きにくい性質を持っています。
また、プラスチックのように水分を吸収しないため、経年による内部からの変色もほとんど起こりません。
初期費用は高くなりますが、審美性と耐久性を考慮すると有力な選択肢です。
色の濃いものを飲食した後はうがいや歯磨きを習慣にする
日々の食生活において、着色を予防するための簡単な習慣を取り入れることが効果的です。
コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレーなど、色の濃いものを口にした後は、できるだけ早く歯を磨くか、水で口をゆすぐように心がけましょう。
これにより、着色の原因となる色素が差し歯の表面に付着している時間を短くし、色素沈着を防ぐことができます。
特にプラスチック製の差し歯は着色しやすいため、この習慣は重要です。
外出先などで歯磨きが難しい場合でも、水で口をしっかりゆすぐだけでも一定の効果が期待できます。
食後のひと手間が、差し歯の白さを維持することにつながります。
歯科医院で定期的にメンテナンスを受ける
毎日の丁寧なセルフケアに加えて、歯科医院での定期的なプロフェッショナルメンテナンスを受けることは、差し歯の白さを維持するために不可欠です。
日々の歯磨きでは落としきれない歯の表面のバイオフィルムや、付着し始めたばかりの着色汚れは、歯医者での専門的なクリーニング(PMTC)によって効果的に除去できます。
歯科医師や歯科衛生士が専用の機器と研磨ペーストを用いて、差し歯の表面を傷つけることなくツルツルに磨き上げ、汚れの再付着を防ぎます。
3ヶ月から半年に一度のペースで定期検診に通うことで、黄ばみを予防し、口腔内全体の健康を守ることにもつながります。
まとめ
差し歯は、天然歯を白くするホワイトニングでは効果が得られません。
差し歯の黄ばみに対処するには、その原因に応じた方法を選択する必要があります。
コーヒーやタバコのヤニなど表面的な汚れが原因であれば、歯科医院のクリーニングで除去が可能です。
一方、プラスチック素材の経年劣化による内部からの変色が原因の場合は、差し歯自体を新しいものに作り直す(交換する)ことが唯一の解決策となります。
差し歯の白さを長く保つためには、着色しにくいセラミック素材を選んだり、色の濃い飲食の後にケアをしたり、歯科医院で定期的なメンテナンスを受けたりすることが有効です。
自己判断で対処せず、まずは歯科医師に相談し、自身の状況に合った最適な方法を見つけることが重要です。