
歯列矯正で使われる青ゴムは、本格的なワイヤー矯正を始める前段階の処置です。
この青ゴムが「痛い」という話を聞き、不安に感じる人も少なくありません。
青ゴムには、奥歯に金属のバンドを装着するための隙間を作る重要な役割があります。
この記事では、青ゴムの役割や痛みの原因と対処法、そして青ゴムを外した次の治療の流れについて解説します。
矯正治療の最初のステップを理解し、不安を解消しましょう。
歯列矯正で使われる「青ゴム」の役割と装着期間
歯科矯正で用いられる青ゴムは、セパレーティングゴムとも呼ばれ、奥歯の歯と歯の間に隙間を作るために使用します。
これは、後に「バンド」と呼ばれる金属の輪を奥歯に装着するための準備段階です。
青ゴムの持つ弾性を利用して、数日間かけてゆっくりと歯を動かし、必要なスペースを確保する効果があります。
この処置の期間は、矯正治療全体の成功に影響を与える重要なステップとなります。
奥歯にバンドを入れる隙間を作るための装置
青ゴムは、奥歯に矯正用のバンド(金属の輪)をスムーズに装着するための隙間を確保する装置です。
奥歯は噛み合わせの力が強くかかるため、矯正治療の固定源として重要な役割を担います。
ここにしっかりとしたバンドを装着することで、ワイヤーの力を効率的に歯全体に伝えることができます。
付け方は、専用の器具を使って青ゴムを伸ばし、歯と歯の間に滑り込ませます。
歯が密集している箇所に入れるため、装着時に圧迫感や多少の痛みを感じることがありますが、バンドを適切に装着するために不可欠な処置です。
この処置によって、安定した土台が作られます。
装着期間の目安は数日〜1週間ほど
青ゴムの装着期間は、一般的に数日から1週間程度が目安です。
この期間で、奥歯にバンドを装着するための十分な隙間が作られます。
長期間、例えば1ヶ月も装着し続けることはありません。
なぜなら、必要な隙間が確保できれば青ゴムの役割は終わり、長期間装着していると歯ぐきに炎症を起こしたり、ゴムが歯ぐきの下に埋まってしまったりするリスクがあるためです。
また、症例によっては青ゴムを使わないケースもあります。
例えば、もともと歯と歯の間に隙間がある場合や、バンドではなく別の装置で代用する治療計画の場合には、このステップを省略することがあります。
青ゴムはなぜ痛い?痛みのピークはいつまで続く?
青ゴムを装着すると痛みを感じることがありますが、これは矯正治療で歯が動き始める最初のサインです。
ゴムの力で歯が押され、歯根膜が圧迫されることで痛みが生じます。
特に、これまで動かしたことのない歯に初めて力を加えるため、敏感に感じやすい傾向があります。
ただし、痛みの感じ方には個人差が大きく、強い痛みを感じる人もいれば、ほとんど痛くないと感じる人もいます。
この痛みは一時的なものであり、治療が順調に進んでいる証拠とも言えます。
歯を動かし始める最初のステップだから痛みを感じやすい
青ゴムによる痛みは、歯列矯正で歯を動かし始める最初のステップであることが主な原因です。
これまで固定されていた歯に、ゴムの弾性によって持続的な力が加わることで、歯の根を支えている歯根膜が圧迫されます。
この圧迫や引っ張られる感覚が、痛みや違和感として認識されるのです。
特に、矯正治療の初期段階では、歯やその周りの組織が外部からの力に慣れていないため、痛みを感じやすくなります。
物が挟まっているような違和感や、噛んだ時の鈍い痛みとして現れることが多いですが、これは歯が予定通りに動き出している証拠です。
この段階を乗り越えることで、本格的な矯正装置の装着へと進んでいきます。

痛みのピークは装着後2〜3日で徐々に和らぐ
青ゴムを装着した後の痛みは、通常、装着当日から翌日にかけて徐々に強くなり、2〜3日後がピークとなる傾向にあります。
この期間は、歯が最も動いている時期であり、噛んだ時や何もしなくてもジンジンとした痛みを感じることがあります。
しかし、このピークを過ぎると、歯がその位置に慣れ始めるため、痛みは次第に和らいでいきます。
多くの場合は1週間程度でほとんど気にならなくなります。
痛みが続く期間や強さには個人差がありますが、一過性の症状であることがほとんどです。
もし1週間以上経っても強い痛みが続く場合は、何か別の問題が起きている可能性も考えられるため、歯科医院に相談してください。
【つらい痛みを乗り切る】青ゴム装着中の4つの対処法
青ゴム装着中のつらい痛みは、いくつかの方法で和らげることが可能です。
我慢できないほどの痛みがある場合は、無理をせずに対処法を試しましょう。
食事の工夫や適切な口腔ケアは、痛みを軽減するだけでなく、青ゴムが外れるトラブルを防ぎ、虫歯のリスクを低減させることにも繋がります。
ここでは、痛みを乗り切るための具体的な4つの対処法を紹介します。
自分に合った方法を見つけて、この期間を快適に過ごせるようにしましょう。
痛み止めを服用して痛みを抑える
青ゴムの痛みが強く、日常生活に支障をきたす場合は、痛み止め(鎮痛剤)を服用することが有効な対処法です。
市販の痛み止めでも対応できますが、歯科医院で処方されたものを服用するのが最も安心です。
矯正治療中の痛み止めに関しては、種類によって歯の動きに影響を与える可能性が指摘されることもあるため、事前に歯科医師に相談し、適切な種類や服用タイミングについて指示を仰ぐことをお勧めします。
特に痛みがピークとなる装着後2〜3日の間、食事の前などに服用すると、食事の際の痛みを和らげることができます。
痛みを我慢しすぎず、薬の力も借りながら乗り切りましょう。
硬いものや粘り気のある食べ物を避ける
青ゴムを装着している期間は、食事の内容に注意が必要です。
特に、せんべいやナッツのような硬い食べ物は、噛む際に歯に強い力がかかり、痛みを増幅させる原因となります。
また、ガムやキャラメル、お餅といった粘り気のある食べ物は、青ゴムに付着して外してしまうリスクが高まります。
青ゴムが外れると、計画通りに歯の隙間が作れず、治療が遅れてしまう可能性も出てきます。
痛みを感じやすい時期は、歯に負担をかけない食事を心がけることが大切です。
繊維質の多い野菜なども、ゴムに絡まりやすいことがあるため、小さく切ってから食べるなどの工夫をすると良いです。
歯ブラシを優しく当てて丁寧に清掃する
青ゴムの装着中は痛みや違和感から歯磨きを怠りがちですが、口腔内を清潔に保つことは非常に重要です。
ゴムの周りには食べ物のカスや歯垢が溜まりやすく、虫歯や歯肉炎の原因になります。
歯磨きの際は、毛先の柔らかい歯ブラシを選び、青ゴムの周辺を傷つけないように優しく当てて丁寧に磨きましょう。
ゴシゴシと強く磨くと、青ゴムが外れたり歯ぐきを傷つけたりする恐れがあります。
また、デンタルフロスを使用する際は、青ゴムを引っ掛けて外してしまわないよう、上から下へ通す一方向のみにとどめ、引き抜く際には横からスライドさせるように抜くなど、使い方に注意が必要です。
痛みが強いときは食事をおかゆやスープにする
青ゴムによる痛みがピークに達し、固形物を噛むのがつらい場合は、食事の内容を工夫しましょう。
おかゆや雑炊、ポタージュスープ、ヨーグルト、ゼリー飲料など、あまり噛まなくても栄養を摂取できるものが適しています。
痛みを我慢して食事を抜いてしまうと、体力が低下し、かえって痛みを感じやすくなることもあります。
また、栄養不足は歯の移動にも影響を与えかねません。
痛みが強い数日間は、無理せずに流動食や柔らかい食事に切り替え、必要な栄養をしっかりと摂ることを優先してください。
痛みが和らいできたら、徐々に通常の食事に戻していくと良いでしょう。

青ゴムが取れた・飲み込んだ!よくあるトラブルの対処法
青ゴムの装着中には、意図せず外れたり、誤って飲み込んでしまったりするトラブルが起こることがあります。
特に、青ゴムが取れた場合や、食事中に切れたり切れるといった状況は珍しくありません。
このような時、慌てて自分で戻そうとすると、歯や歯茎を傷つける可能性があるため避けるべきです。
ここでは、青ゴムに関するよくあるトラブルと、その際にどう対処すべきかを解説します。
落ち着いて適切な対応をとることが、治療をスムーズに進める鍵となります。
青ゴムが外れたらすぐに歯科医院へ連絡する
食事や歯磨きの際に青ゴムが外れた場合は、自分で戻そうとせず、速やかにかかっている歯科医院へ連絡してください。
青ゴムが外れたまま放置すると、予定していた歯の隙間が十分に作れず、次のステップであるバンド装着ができなくなる可能性があります。
その結果、治療計画に遅れが生じ、予約を取り直す必要が出てくることも考えられます。
特に、次の予約日が近い場合でも、隙間が後戻りしてしまうことがあるため、自己判断で放置するのは避けるべきです。
歯科医院に連絡し、指示を仰ぐことで、適切な対応をとることができます。
状況によっては、早めに再装着してもらう必要があります。
誤って飲み込んでも自然に排出されるので心配ない
万が一、外れた青ゴムを誤って飲み込んでしまっても、過度に心配する必要はありません。
矯正治療で使用される青ゴムは、医療用のゴムでできており、体に害のない素材で作られています。
サイズも非常に小さいため、消化されることなく、通常は数日以内に便と一緒に自然に体外へ排出されます。
体に吸収されたり、内臓に詰まったりする危険性は極めて低いと考えられています。
もし飲み込んでしまった場合でも、慌てずに様子を見てください。
ただし、飲み込んだ後に体調に異変を感じた場合は、念のため医療機関に相談しましょう。
基本的には、飲み込んだこと自体よりも、青ゴムが外れてしまった状態を放置しないことが重要です。
青ゴムの次はどうなる?ワイヤー矯正の治療ステップ
青ゴムの役割が無事に終わると、いよいよ本格的なワイヤー矯正治療が始まります。
青ゴムによって作られたスペースを利用して、奥歯に装置を取り付けるのが最初のステップです。
「青ゴムの次」の段階に進むことで、歯を動かすための土台が完成します。
その後、歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな装置を接着し、そこにワイヤーを通して歯に力をかけていきます。
ここからは、青ゴムを外した後の具体的な治療の流れを3つのステップに分けて解説します。
ステップ1:青ゴムを外し、奥歯に金属のバンドを装着する
予約日になったら、まず歯科医院で青ゴムを外します。
青ゴムによって歯と歯の間に適切な隙間ができていれば、次は奥歯に「バンド」と呼ばれる金属製の輪を装着するステップに進みます。
このバンドは、矯正用ワイヤーの固定源となる非常に重要なパーツで、強い力がかかる奥歯をしっかりと支える役割を果たします。
歯科医師が患者さんの歯の形に合ったサイズのバンドを選び、歯科用のセメントで奥歯に固定します。
装着時には圧迫感を感じることがありますが、青ゴムで隙間が作られているため、通常はスムーズに装着できます。
このバンドが、今後のワイヤー矯正治療の基点となります。
ステップ2:歯の表面にブラケットを取り付ける
奥歯にバンドを装着した後、または同日に、他の歯の表面にブラケットという小さな装置を一つずつ接着していきます。
ブラケットは、ワイヤーの力を各歯に伝えるための重要な部品で、金属製のもの(メタルブラケット)や、セラミックやプラスチックでできた目立ちにくいもの(審美ブラケット)など、様々な種類があります。
歯科医師が歯の表面をきれいに清掃・乾燥させた後、専用の接着剤を使って正確な位置にブラケットを取り付けます。
この作業自体に痛みはほとんどありませんが、装置が唇や頬の内側に当たることで、慣れるまでは口内炎ができることがあります。
ステップ3:ブラケットにワイヤーを通して矯正を開始する
奥歯のバンドと各歯のブラケットが装着されたら、いよいよワイヤーを通して本格的な矯正治療がスタートします。
ブラケットにはワイヤーを通すための溝(スロット)があり、そこにアーチ状のワイヤーをはめ込み、細いゴムや針金で固定します。
このワイヤーが元の形に戻ろうとする力を利用して、歯を少しずつ目的の位置へと動かしていくのです。
最初に通すワイヤーは比較的細くて柔らかいものが使われますが、それでも装着後数日間は、歯が動くことによる痛みや圧迫感を感じることがあります。
以降は、定期的に通院してワイヤーの調整や交換を行い、段階的に歯並びを整えていきます。
まとめ
歯列矯正における青ゴムは、奥歯にバンドを装着するための隙間を作る重要な役割を担います。
装着後2〜3日をピークに痛みを感じることが多いですが、これは歯が動き始めた証拠であり、痛み止めや食事の工夫で対処可能です。
もし青ゴムが外れた場合は、自己判断で放置せず、速やかに歯科医院へ連絡してください。
青ゴムの処置が終わると、バンドとブラケットを装着し、ワイヤーを通して本格的な矯正治療が開始されます。
抜歯の有無など個人の治療計画によって詳細は異なりますが、青ゴムはこの一連の流れの第一歩です。
痛みやトラブルへの対処法を理解し、前向きに治療を進めましょう。