歯列矯正中に歯の黄ばみが気になり、ホワイトニングをしたいと考えている方は少なくありません。歯並びだけでなく、歯の色もきれいにしたいと思うのは自然なことです。
では、矯正中にホワイトニングは可能なのでしょうか?
実は、矯正方法やホワイトニングの種類によっては、矯正中でもホワイトニングができる場合があります。このコラムでは、矯正中のホワイトニングの可否や注意点、適切な時期について詳しく解説します。歯をきれいにしたいという希望を叶えるために、ぜひ参考にしてください。
矯正中のホワイトニングの可否について
歯科矯正中であっても、ホワイトニングができるかどうかは、選択している矯正方法によって異なります。すべての矯正方法で矯正中にホワイトニングができるわけではないため、ご自身の矯正方法を確認することが重要です。
矯正方法とホワイトニングの種類の関連性
ホワイトニングには主にオフィスホワイトニング、ホームホワイトニング、セルフホワイトニングの3種類があります。オフィスホワイトニングは歯科医院で専門家が行うもので、高濃度の薬剤を使用するため短期間での効果が期待できます。ホームホワイトニングは歯科医院で作成したマウスピースと薬剤を使って自宅で行う方法で、比較的低い濃度の薬剤を時間をかけて作用させます。セルフホワイトニングは、歯科医院以外で行うもので、使用できる薬剤や機器に制限があります。
矯正方法によっては、これらのホワイトニング方法のうち、できるものとできないものがあります。
ワイヤー矯正中のホワイトニング
ワイヤー矯正の場合、歯の表側にブラケットとワイヤーを装着する表側矯正では、ホワイトニング剤が装置の周りに均一に行き渡らないため、オフィスホワイトニングもホームホワイトニングも原則として矯正期間中は推奨されません。装置を外した際に、装置が付いていた部分とそうでない部分で色ムラが生じる可能性があるためです。
一方、歯の裏側に装置を装着する裏側矯正(舌側矯正)であれば、歯の表面に装置がないため、オフィスホワイトニングは矯正中でも可能です。しかし、マウスピースを使用するホームホワイトニングは、裏側に装置があるためマウスピースが適切に装着できず、難しい場合が多いです。
マウスピース矯正中のホワイトニング
マウスピース矯正(インビザラインなど)は、透明なマウスピースを取り外せるため、ホワイトニングを比較的容易に行うことができます。特にホームホワイトニングは、矯正用に使用しているマウスピースをホワイトニングにも転用できる場合があり、費用や手間を抑えられるというメリットがあります。
マウスピース矯正中のオフィスホワイトニングやデュアルホワイトニング(オフィスとホームの併用)も可能です。ただし、歯の表面にアタッチメント(歯を動かすための小さな突起)が付いている場合は、その部分にホワイトニング剤が届きにくく、色ムラが生じる可能性があるため注意が必要です。
アタッチメントが付いている場合は、アタッチメントを避けてホワイトニング剤を塗布するか、矯正治療後にアタッチメントを外してからホワイトニングを行うのが望ましいとされています。自宅で手軽にホワイトニングしたい方にとって、マウスピース矯正はホワイトニングと並行しやすい矯正方法と言えるでしょう。
矯正中にホワイトニングを行う際の注意点
矯正中にホワイトニングを検討する際には、いくつかの注意点があります。これらの点を知っておくことで、トラブルを防ぎ、より効果的にホワイトニングを進めることができます。
知覚過敏や痛みの可能性
歯科矯正中は歯に力がかかり、歯ぐきが敏感になることがあります。特に矯正を開始したばかりの頃は、痛みを感じやすい状態です。このような状況でホワイトニングを行うと、ホワイトニング剤の刺激によって知覚過敏や痛みが強く出る可能性があります。
痛みが強い場合は、無理に治療を続けず、歯科医師に相談することが重要です。痛みが落ち着いてからホワイトニングを行うことも検討しましょう。矯正中の歯は通常よりもデリケートになっているため、慎重な対応が必要です。
ホワイトニング効果への影響
矯正中にホワイトニングを行うと、ホワイトニング効果が十分に得られないケースや、効果にムラが出る可能性があります。特にワイヤー矯正の装置やマウスピース矯正のアタッチメントが付いている歯の表面には、ホワイトニング剤が均一に作用しにくいため、装置やアタッチメントを外した際に、その部分だけが白くなっていないという状況が起こりえます。
また、矯正によって歯並びがまだ完全に整っていない場合、歯が重なり合っている部分などにも薬剤が届きにくく、色ムラの原因となることがあります。歯全体を均一に白くするためには、歯並びがある程度整ってからホワイトニングを行う方が効果的であると考えられます。
色ムラのリスク
ワイヤー矯正やマウスピース矯正中にホワイトニングを行う場合、矯正装置やアタッチメントの存在により、薬剤が均一に作用せず色ムラが生じるリスクがあります。装置が外れるタイミングで色の差が明らかになることもあります。
見た目への影響を最小限に抑えるためにも、歯科医師の指導のもとでホワイトニングを行うことが重要です。必要に応じて矯正後にホワイトニングを再調整するケースもあることを理解しておきましょう。
費用について
歯列矯正とホワイトニングは、どちらも基本的に自費診療となるため、それぞれに費用がかかります。矯正治療の費用は矯正方法や治療期間によって大きく異なりますが、一般的に数十万円から100万円以上かかる場合があります。
ホワイトニングの費用も、オフィスホワイトニング、ホームホワイトニング、デュアルホワイトニングなど、方法によって異なりますが、数万円から十数万円が目安です。矯正中にホワイトニングを同時に行う場合、これらの費用が別途発生するため、費用対効果をしっかり考えることが大切です。
未成年者のホワイトニング
未成年者、特に18歳未満の場合、歯や歯ぐきがまだ成長途中であり、大人よりもデリケートです。ホワイトニングに使用される過酸化水素などの薬剤が、歯の成長に影響を与える可能性が指摘されています。
そのため、多くの歯科医院では未成年者へのホワイトニングを推奨していません。保護者の同意が必要であるとともに、成長段階にある歯の健康と安全を最優先に考え、タイミングや施術方法を慎重に検討する必要があります。
矯正中のホワイトニングの適切な時期
矯正中にホワイトニングを行う場合、適切な時期を選ぶことで、より安全かつ効果的に治療を進めることができます。
矯正治療中のホワイトニング
歯並びが完全に整う前は、歯が重なり合っていたり、薬剤が届かない箇所があったりして、十分な効果が得られにくいことがあります。
とくにマウスピース矯正では、新しいマウスピースに交換してから数日経過し、痛みが落ち着いた時期が施術に向いています。無理に進めるのではなく、歯の状態に応じてタイミングを見極めることが大切です。
矯正治療後のホワイトニング
最も理想的なホワイトニングのタイミングは、歯列矯正が完了し、歯並びが完全に整ってからです。薬剤を歯全体に均一に塗布できるため、色ムラのリスクを大幅に減らせます。
また、矯正後は歯磨きなどのセルフケアもしやすくなり、ホワイトニング後の白さを長く保つことができます。保定期間中に使用するマウスピース型リテーナーをホワイトニング用として活用できる場合もあります。
まとめ:矯正中でも可能なホワイトニング、計画的に取り入れよう
歯列矯正中にホワイトニングをしたいと考える方は多くいますが、できるかどうかは矯正方法・ホワイトニングの種類・歯の状態によって異なります。
特にマウスピース矯正は、装置を取り外せるため比較的ホワイトニングと並行しやすいと言えます。ワイヤー矯正の場合、裏側矯正であればオフィスホワイトニングが可能ですが、表側矯正では色ムラのリスクが高くなります。
最も効果的かつ安全なタイミングは、矯正治療が完了してからです。矯正中のホワイトニングを検討する際は、必ず歯科医師に相談し、自分に合った方法と時期を見極めましょう。
美しい歯並びと白い歯を同時に手に入れるためには、計画的なアプローチが欠かせません。