
矯正治療は、短くても半年、長い場合は2年以上かかることも珍しくありません。
この長い期間の中で、「歯並びと同時に歯の白さも整えたい」というニーズは非常に多く、近年では矯正とホワイトニングを併用したい患者さんが増えています。
実際に、矯正治療中でもホワイトニングが可能なケースは多数存在します。
しかし、すべての矯正方法で自由にできるわけではなく、装置の種類によって大きく制限される場合もあります。
また、矯正中は歯が動く過程で敏感になり、通常よりも痛みが出やすくなることもあるため、注意点を理解したうえで判断する必要があります。
ここでは、矯正中のホワイトニングについて、「どの矯正方法なら可能なのか」「どの種類が最適なのか」「どのようなリスクがあるのか」「費用はどれくらいなのか」を、まとめました。
矯正中にホワイトニングをするべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
矯正治療中でもホワイトニングはできるのか?
結論として、矯正治療中でもホワイトニングは可能です。しかし、「どの矯正方法でも白くできる」というわけではありません。
矯正装置が歯の表面を覆っているタイプの場合、薬剤が歯の表面全体に届かないため、どうしても色ムラができてしまいます。
ここでは、まず矯正治療中の歯の状態について理解し、ホワイトニングが可能かどうかの判断基準を確認していきます。
矯正中の歯は薬剤の刺激を受けやすい
矯正中の歯は、普段よりも敏感になりやすい状態です。歯を動かすというのは、骨の代謝を利用して歯の位置を変える行為であり、歯根周囲の組織が常に軽度の炎症状態になっています。
そのため、ホワイトニング薬剤の刺激が通常よりも強く感じられ、知覚過敏を誘発しやすくなります。
歯科医院では、矯正の進行状況や歯ぐきの状態を観察しながら、施術の可否を判断します。
矯正方法によってホワイトニングの可否が変わる理由
矯正方法によってホワイトニングの可否が変わるのは、「薬剤がどれだけ歯に触れられるか」で決まるからです。
・ブラケット矯正(ワイヤー矯正):歯の表面に装置がある
・マウスピース矯正:歯の表面に何も接着されない
・裏側矯正:表側はフリーでホワイトニングしやすい
つまり、薬剤が届くかどうかが最重要ポイントなのです。

矯正装置の種類によって異なるホワイトニングの可否と注意点
矯正装置にはさまざまな種類があり、見た目・期間・治療の自由度が異なります。ここでは代表的な3つの矯正方法におけるホワイトニングの可否を詳しく説明していきます。
ワイヤー矯正の場合:ホワイトニングは原則不可
ワイヤー矯正は最も一般的な矯正方法で、ブラケットとワイヤーを歯の表面に接着する治療です。この方法ではホワイトニングは推奨されません。
その理由は、ブラケット周辺に薬剤が届かないために色ムラが発生するからです。
ブラケットの跡が四角く残るリスク
ブラケットが接着されている部分は薬剤が触れないため、本来の歯の色がそのまま残ります。周囲の歯だけが白くなり、ブラケットを外したときに四角い跡が残り、まだら模様のように見えてしまいます。
これを解消するには装置を外した後、再度ホワイトニングを行う必要があり、二度手間となります。
ワイヤー矯正中にホワイトニングを考えている人は、一度冷静に「見た目のリスク」と「費用の負担増加」を考慮したうえで判断することが重要です。
マウスピース矯正の場合:矯正とホワイトニングの同時進行が可能
インビザラインなどのマウスピース矯正は、ホワイトニングと最も相性の良い矯正方法です。
これは、矯正に使う透明のマウスピースが、そのままホワイトニング用のトレーとして使用できる場合があるためです。
マウスピースをホワイトニングトレーとしても利用できる
専用のホワイトニングジェルをマウスピースに流し込んで装着するため、矯正しながら歯を白くするという“同時進行”が可能になります。
治療期間を有効活用できるため、忙しい人や期間短縮を目指す人にとって最適な選択肢です。
裏側矯正の場合:歯の表面に装置がないのでホワイトニング可能
裏側矯正(リンガル矯正)は、歯の裏側に装置を付ける治療方法です。この方法では歯の表側に何も接着されていないため、ホワイトニングは問題なく行えます。
表側全体が薬剤に接触できるため、ムラなく施術できます。
裏側矯正はホワイトニングだけでなく、見た目のストレスが少ないことも人気の理由です。

矯正中に行えるホワイトニングの種類とその特徴
矯正治療中に選べるホワイトニング方法は大きく次の3つです。それぞれの特徴とメリット・デメリットを詳しく見ていきます。
歯科医院で行うオフィスホワイトニング
オフィスホワイトニングは、歯科医院で専門家が施術する方法です。高濃度の薬剤と光照射を組み合わせるため、即効性があり、1回でもかなり白さを実感できます。
メリット
・短期間で白くなる
・歯科医師の管理下で安全性が高い
・部分的な施術も可能
デメリット
・後戻りしやすい
・費用が高め
・矯正装置の範囲によっては施術範囲が限られる
短期間で白くしたい特別なイベント(結婚式など)がある人に向いている方法です。
自宅で行うホームホワイトニング
ホームホワイトニングは、低濃度の薬剤を使用し、毎日数時間マウストレーを装着して徐々に白くしていく方法です。
メリット
・白さが長持ちする
・マウスピース矯正中なら器具をそのまま利用できる
・自分のペースで進められる
デメリット
・効果までに時間がかかる
・装着時間の自己管理が必要
矯正中に最も選ばれるホワイトニングはホームホワイトニングです。
サロンなどで行うセルフホワイトニング
セルフホワイトニングは歯の表面のステインを落とすだけで、漂白ではありません。そのため、「歯本来の白さに戻す」目的で利用されます。
メリット
・費用が安い
・短時間
・痛みがほとんどない
デメリット
・歯そのものを白くする効果はない
・医療行為ではないため強い効果は期待できない
ホワイトニングというよりメンテナンス目的で利用されることが多い方法です。
矯正中にホワイトニングする際に知っておきたい注意点
矯正中のホワイトニングには、通常のホワイトニングにはない注意点が存在します。矯正装置や歯の状態によっては、むしろ「やらないほうが良い」ケースもあります。
ここでは主要な注意点を詳しく説明します。
矯正装置の部分は色ムラが出やすい
ブラケット矯正では、薬剤が届かない部分が残るため、後で四角い跡が残ります。これは非常に目立つため、審美的に問題になるケースが多いです。
歯がしみたり痛みが出やすい
矯正中は歯を動かすため、歯根膜が敏感になっており、炎症が起こりやすくなっています。この状態でホワイトニングを行うと、通常よりも痛みが出やすくなります。
特に冷たいものや風がしみるなどの知覚過敏は、矯正中の患者が訴える症状のひとつです。
未成年のホワイトニングは推奨されない
歯のエナメル質は18歳頃まで成熟が続くと言われているため、未成年でのホワイトニングは歯の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。歯科医院でも未成年には施術しないところがほとんどです。
人工歯は白くならない
ホワイトニングは天然歯にしか作用しません。
・レジン
・セラミック
・ジルコニア
・金属に白い材料をかぶせたクラウン
これらは人工物なので白くなりません。矯正前の治療で人工物が多い場合、ホワイトニング後に色の不一致が目立つ可能性があります。

ホワイトニング効果を最大にするなら矯正終了後がおすすめ
矯正中でもホワイトニングはできるものの、最も美しい均一な白さを得るには、矯正がすべて終わった後がベストタイミングです。
矯正装置が外れた状態であれば薬剤が均一に浸透し、ムラがまったく出ないため、美しい仕上がりになります。
また歯並びが整った状態のホワイトニングは、光の反射も均一になるため、より明るく美しい印象になります。
保定用マウスピースがそのままホワイトニングに使える
矯正終了後に使う保定装置(リテーナー)がマウスピースタイプの場合、ホワイトニング用トレーとして使用できることがあります。これにより費用を抑えつつ施術できるため、矯正後のホワイトニングのコストを最小限にすることも可能です。
矯正中に行うホワイトニングの費用目安
ホワイトニングの費用は医院によって差がありますが、大まかな相場は次の通りです。
オフィスホワイトニング
1回 20,000円〜70,000円
複数回コースで50,000円〜100,000円程度になることもあります。
ホームホワイトニング
20,000円〜50,000円
ジェル追加は数千円
マウスピース矯正中ならトレー作製費が不要になることがあります。
セルフホワイトニング
1回 3,000円〜5,000円ほどが一般的です。
ただし漂白効果はほとんどありません。
まとめ
矯正中でもホワイトニングは可能ですが、矯正方法によって適正が大きく変わります。
・マウスピース矯正→同時進行が可能で最適
・裏側矯正→矯正中でもホワイトニング可能
・ワイヤー矯正→色ムラが出るため原則推奨されない
また、矯正中の歯は敏感で痛みが出やすく、人工歯は白くならないなどの注意点もあります。
もっとも美しい結果を求めるなら、矯正装置が外れた後にホワイトニングを行うのが最もおすすめです。保定用マウスピースを使用すれば費用を抑えられることもあります。
矯正とホワイトニングはどちらも口元の美しさを高めるための治療です。だからこそ、歯科医師と十分に相談しながら、あなたにとって最も負担が少なく、効果的なタイミングと方法を選ぶことが大切です。