妊娠中は、赤ちゃんを守るために日々さまざまなことに気を配る必要があります。
歯のホワイトニングに関心を持つ方も多いですが、妊娠中のホワイトニングは一般に推奨されていません。
なぜ避けるべきなのか、その根拠から、妊娠中でもできる代替手段、そして出産後の再開時期まで、しっかりとお伝えします。
1. なぜ妊娠中にホワイトニングを避けるべきか?
1-1. 胎児への影響がはっきりしていないから
歯科医院で使用されるホワイトニング剤には、過酸化水素や過酸化尿素が主成分として含まれています。
これらは歯の漂白効果が高い反面、薬剤がわずかでも体内に吸収された場合、胎盤を通じて胎児に届く可能性があります。
研究データが不足している
長期的に安全性が示された確かな臨床研究がまだ少なく、安全性が完全に確認されていません。
薬剤メーカーの指示書も慎重
多くのメーカーが「妊娠中・授乳中は使用を避けるよう」に記載しており、安全サイドの判断が主流です。
そのため、現段階では「安全である」と断言できない以上、赤ちゃんにリスクを及ぼす可能性を未然に防ぐ意味でも、妊娠中のホワイトニングは避けるのが安全です。
1-2. 妊娠中は口内環境が不安定に
妊娠すると体内のホルモンバランスが大きく変化します。
この結果、以下のような口内トラブルが起こりやすくなります。
唾液の分泌量が減少
唾液は歯の再石灰化や菌のバランスを整える役割がありますが、減少すると口腔内が酸性に傾きやすくなります。
免疫力の低下
妊娠中は免疫調整が起こりやすく、口腔内の細菌バランスが乱れやすくなります。
つわりによる不規則なケア
つわりで歯磨きが難しくなったり、飲食回数が増えて間食多めになることで、虫歯・歯周病リスクが高まります。
こうしたデリケートな状態でホワイトニング剤を使用することで、知覚過敏や歯茎の炎症、さらには痛みなどが起こりやすく、トラブルの確率が高まります。
2. 妊娠中でも歯を自然に白く保つためのケア
ホワイトニングはできませんが、以下のケアを取り入れることで、歯の見た目を清潔に、自然な白さに保つことが可能です。
2-1. 歯科医院でのプロフェッショナルクリーニング(PMTC)
PMTCとは?
歯科医院で提供される、歯磨きでは取れない歯石・プラーク・着色を機械的に除去する処置です。
メリット
表面の汚れが落ちて自然な歯の白さが蘇る
虫歯、歯周病の予防につながる
妊娠中期(16〜27週ごろ)であれば比較的安全に受けられる
歯科医院によっては、妊婦さん向けに時間を短めにしたり、痛みに配慮したりする対応もあります。ぜひ相談してみましょう。
2-2. 自宅での市販オーラルケア製品
痛みやトラブルを避けつつ、歯を美しく見せたい場合、自宅ケアが有効です。
ホワイトニング成分名「ステイン除去」タイプ:
ポリリン酸ナトリウムなど、研磨性・着色除去効果のある温和な成分で歯表面を磨き上げます。
注意点:
海外製の「ホワイトニング」歯磨き粉には過酸化水素が含まれている場合があるため、成分表をよく確認し、使用の有無を判断してください。
歯のマニキュアタイプ:
一時的に表面をコートし、白く見せる製品です。使用後は剥がれるため、継続使用には向きませんが、イベント前に使うのに適しています。
3. 妊娠中の歯磨き粉を選ぶときのポイント
妊娠中は体調や感覚が変化しやすいため、歯磨き粉の選び方にも配慮が必要です。以下のポイントを参考にしてください。
3-1. 刺激の強すぎないものを選ぶ
香料・味:
つわりでにおいや味に敏感になる場合があります。
→ 無香料、低香料、ソフトなミント風味をおすすめします。
人工的な添加物に注意:
人工甘味料、防腐剤などを避け、自然由来の原料配合やオーガニックなものが安心です。
海外製品は要注意:
日本で規制されている過酸化水素を含むものがあるため、成分表示を必ず確認してください。
3-2. 虫歯予防・歯肉ケア成分入りを選ぶ
妊娠中は虫歯や歯肉炎のリスクが高まるため、次のような成分を意識しましょう。
フッ素(1000〜1500ppm):
エナメル質を強化し、虫歯菌の酸から歯を守ります。
歯周病や歯肉炎対策成分:
緑茶エキス、ピロリン酸、キシリトールなど、抗菌・抗炎症作用がある成分が配合されたものが有効です。
研磨性が低く、歯や歯茎に優しいタイプ:
低研磨・無研磨で、妊娠中の敏感な口内環境でも安心です。
4. うっかり妊娠中にホワイトニングしていたら?
妊娠に気づかずホワイトニングを受けていた経験があっても、過剰に心配する必要はありません。
報告された影響は少ない
これまでに重大な影響が出たという明確な症例は報告されていません。
今後どうするかが大切
不安がある場合は、かかりつけの歯科医師や産婦人科医に相談してください。心配がないと確認できれば安心できます。
薬や痛み止めの併用に注意
ホワイトニングと共に服用した薬に心配がある場合は、速やかに中止し医師の判断を仰ぐことが重要です。
5. ホワイトニングはいつから再開すべき?
5-1. 安全な再開時期
出産と授乳が終了した後
薬剤の成分が母乳に移行する可能性があるため、授乳が完全に終わってからホワイトニングを再開するのが安心です。
産後〜授乳終了までの間
断続的に授乳している場合は、「1日1回以上」の母乳が終了するまでは遅らせるのが無難です。
5-2. 妊娠前にホワイトニングを済ませておく手も
妊娠前に準備
「妊娠がわかる前にホワイトニングを終えておく」という方法も有効です。
タイミングが合えば、安心して妊娠期を過ごせます。
産後すぐでもOK?
産後すぐでも、基本的には歯科で指導とともに再開できます。相談の上、計画を立てましょう。
6. まとめ:妊娠中は“安全第一”の口腔ケアを
ホワイトニング剤の安全性は不明確なため、妊娠中は避ける方が良い
口内環境が不安定な妊娠中期には、クリーニングなどケアを工夫しよう
刺激の少ない歯磨き粉で、虫歯・歯肉炎予防をしながら自然な白さをキープ
万が一ホワイトニングを受けてしまったら、かかりつけ医と相談しながら対処
ホワイトニングは出産・授乳終了後に、安全に再開を